この夜は大阪瓦町のフレンチレストラン「ラ・シーム(La Cime)」へ。高田裕介シェフは2007年に渡仏し「タイユヴァン(Le Taillevent)」「ル・ムーリス(Le Meurice)」など名店で働き、2010年に大阪で独立した。「ミシュランガイド大阪」では2つ星、「世界のベストレストラン50」でも常連で、この夜も私達以外は海外ゲストだった。
本町のビジネス街の中、飲食店が立ち並ぶ一角にシックでモードな外観でそのレストランはある。中に入るとシンプルで無駄のない落ち着いた空間が広がる。木のインテリアに木の床、黒いクロスをピンと張った丸テーブルが、暗めの照明の中スポットライトに照らせる様に浮かび上がる。

決して広くはないダイニングだが、余裕を持ったテーブル配置は嬉しい。個室もあるようだ。3人の女性スタッフが全身黒い衣装でサービスにあたる。黒いマスクに黒の手袋をしているので更にモード感も上がり、ファッションに敏感な妻は「オサレなくのいちぽい」と気に入った様子だった。最近イメチェンしたのだろうか、随分と店内イメージが洗練されている。
そんなモードブラックな空間で開けたくなるのはロゼ・シャンパン。ワインリストから「ルイ・ロデレール クリスタル ロゼ 2013(Louis Roederer Cristal Brut Rose)」を選ぶ。黒いテーブルに浮かび上がるキラキラロゼに妻も嬉しそうだ。

そこへ運ばれてきたのは黒く丸い「ブーダンドッグ(Boudindog)」。熱々のブーダンノワールが口中でほどける。なるほど否が応でも期待感を高めてくれる一品。ラシーム定番だけあってさすがに素晴らしいスタートだ。
ブーダンドッグに続くアミューズは「コーヒの塩釜」の中の菊芋とほうれん草。香ばしいコーヒーの風味と苦みを纏った味わい。菊芋のチップスも添えている。これもシャンパンに合って美味しさに満足する。

続いて「マスノスケ(King Salmon)/アスパラガス(Asparagus)/ウニ(Sea Urchin)」。緑の色鮮やかに仕上げた1品はオゼイユをふんだんに使ってサクラマスの脂とともに頂く趣向だ。新玉ねぎのタルトには新玉ねぎのムースをかわいらしく円形に乗せ、更に新玉ねぎのマリネも薄く切ってデザインされている。柔らかい食感と風味を通じて新玉ねぎが現れる。
アスパラガスの千切りにはウニを潜ませ、そしてお茶のスープが注がれている。斬新である。海苔のチップスで蓋をされた小さな器の中にも、グリーンアスパラガスのピューレから、ブラッターチーズ、ルバーブのピューレ、ヨーグルトのムースと層をなしている。こちらも何とも言えない独創的な味わい。

続いて「小松菜(Japanese Mustard Spinach)/うなぎ(Eel)/ヘーゼルナッツ(Hazelnut)」。ヘーゼルナッツのムースの上にレストランで漬けたという小松菜の漬物。さらにヤギのチーズにうなぎ・・様々な食材と風味が交じり合う一品。
更に運ばれる「ジャガイモ(Potato)/クレソン(Water Cress)/つぶ貝(Whelk)」。ジャガイモのピューレの上には軽く薄揚げにしたケールを乗せて。つぶ貝のソテーはエスカルゴバターのような仕立て、フレンチらしい味わいだ。なるほど大阪、たこ焼きに似せた丸い一品もじゃが芋。

まだまだ続く「赤貝(Ark shell)/ハイビスカス(Hibiscus)/グラニースミス(Granny Smith)」。レモングラス、生姜、ハイビスカスを乗せた赤貝。青リンゴセロリなど食感と共に爽やかに。色鮮やかで黒テーブルに映えて美しい。
「蓮根(Lotus Root)/マッシュルーム(Mushroom)/サクラエビ(Sakura Shrimp)」。こちらは正にお好み焼きの再構成。桜エビ、蓮根の下にお好み焼きのような生地を潜ませている。キノコ・マッシュルームのソースの濃厚さがまさにフレンチの味わいだ。思わず笑みの溢れる美味しい一品。

細かい技を使った小皿がさらに登場してくる。次は「鰺(Horse Mackerel)/馬肉(Horse Meat)/もずく(Mozuku Seaweed)」。赤ワインで漬け込んで処理したパリパリのもずくと馬肉。鯵のマリネには出汁を効かせて、わさびも添えた。馬肉が小さいながらも美味しくインパクトがある。
「平貝(Pen Shell)/うど(Udo)/桜(Cherry Blossom)」。白い円器に盛られたのはボイルした山菜ウドだ。下には炙った平貝の身も見え隠れする。その上にはホワイトアスパラガスの泡立てたソースを流し、塩漬けの桜も飾った。

添えられたもう一皿は桜餅のようだが、葉っぱの中には餡子ではなく凝縮した旨味溢れたホタテ貝柱。見た目だけでなく魚介の旨味が、ウドや桜といった日本らしい味わいとともに昇華していた。
ここまででもかなりお腹はいっぱいなのだが、実はまだまだ少量多皿が続いて、慣れている私達でもびっくりするのである(笑)つづく
Restaurant La Cime
3-2-15 1F Kawaramachi,Chuo-ku,OSAKA 5410048 JAPAN
Tel./Fax. +81(0)6-6222-2010
Contemporary French Restaurant in Osaka.
Ranked as one of Asia’s 50 Best Restaurants and listed as 2 Michelin Stars.

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