前回に引き続き大阪瓦町のフレンチレストラン、高田裕介シェフの「ラ・シーム(La Cime)」にて。「ミシュランガイド大阪」では2つ星、「世界のベストレストラン50」の常連でもあるので、この日も私達の他は海外からの客だった。
シックでモードなブラック禅なる空間、木の内装に黒いクロスをピンと張った丸テーブルが余裕を持った配置で緩やかに浮かび上がる。「ルイ・ロデレール クリスタル ロゼ 2013(Louis Roederer Cristal Brut Rose)」と共に味わって行こう。

アイデアと技が光る少量多皿、どれだけの作業工程がかかるだろう、とにかく感心する。既にお腹いっぱいだがまだまだ続く。メニュー上9セット目に当たる「キャベツ(Cabbage)/伊勢海老(Lobster)/アニス(Anise)」。丸ごと火を入れたキャベツ。ラビオリの中には伊勢海老。
キャベツを発酵させた酢漬けのような味わいをアクセントに、食べ応えあるラビオリが印象に残る。器も含めた熱々がまたいい。合わせて自家製バターとパンもここで提供される。

続いて運ばれるのは、色鮮やかなタワーの「人参(Carrol)/あん肝(Monk Fish Liver)/柚子(Yuzu)」。あん肝のテリーヌの上に、熱々のニンジンチップスをかけている。柚が爽やかに良い。
更に続いて「三重クエ(Grouper)/大和当帰(Yamato-toki)/生姜(Ginger)」。三重産のクエ(アラ)とハーブの料理だ。高田シェフの出身である奄美大島の郷土料理「塩豚」のスープをかけて完成する。なるほどそう言えばその他の食材も、奄美大島や鹿児島など九州産が多い。クエの甘みに塩豚の独特なコクが交じり合う。

もうお腹もパンパンと思しき中、メインの「土佐あかうし(TOSA Beef Wagyu)/加茂茄子(Aubergine)/山椒(Japanese Pepper)」が運ばれて来た。肉料理は土佐赤牛のフィレ肉、高知県内でしか改良されていない褐毛和種・高知系の和牛だ。かなりレアで赤いが美しく綺麗に火が入ってる。
付け合わせの鴨ナスのプリッツとした身がなんとも見事。山椒の風味と共に夏の京都を思い起こさせてくれる。

さてすっかり満足したところで、仕分けされた木箱に綺麗に並べられた茶葉たちがやってきた。良い香りが漂う。アールグレイ、ダージリン、生ハーブ、べにふうき、ゆたかみどりなど好きにチョイスできる。中でも珍しいのは「くび木茶」。奄美大島に自生しているツルグミを小さくカットして乾燥させ、それを煮出すと言う木のお茶だ。
そして最後のデセールは2品。いずれもピンクのかわいらしい色調で、ロゼシャンパンを片手に妻はロゼピンクカワイイと喜んでいる。「ダークチェリー(Dark Cherry)/カンパリ(Campari)/タイム(Thyme)」。

ダークチェリーとハーブのムースの下には、ダークチェリーのシャーベット。さらにフレッシュのダークチェリー、アロエ、カンパリのゼリーの味わいも広がり、甘さとほろ苦さを演じる。開いてきた「クリスタル・ロゼ」と味わい的にも調和してくれる。
そして2品目の「桃(Peach)/紫紫蘇(Shiso)/ヴァニラ(Vanilla)」。赤いバラが美しい桃のコンポート。周りには赤シソとヴァラニラのソースを色鮮やかに絡めた。中のブリオッシュにも桃とヴァニラが程よくしみ込んでいる。こちらも甘さとハーブによってさっぱりと頂ける。別腹とはよく言ったものだ。

最後の小菓子は、大阪のシンボル通天閣の神様ビリケンさん、それを模ったタンカンのゼリー(笑) そして大阪・新世界発祥のミックスジュースを閉じ込めたホワイトチョコレートなどが登場した。コースの中にもタコ焼きやお好み焼きモチーフの物があったが、さすが大阪愛といったアイデアに感心する。
3時間超という中でジェットコースターのように様々なプレートが次々に出てくる。その日の食材・客などによって臨機応変にメニューを組み立てるそうだ。食材のみを記したメニューが最後に渡されるのもそう言う事だろう。

素材に対する的確な火入れが印象に強く残る。メインのクエ、赤牛、加茂茄子と見事であった。その上で「フレンチ」というベース、「日本・大阪」という立地、そして「奄美」という出身地。この三角形の中で上質の素材を提供し、食べ手の記憶に刻印させる。そんな世界「The World’s 50 Best Restaurants(今年は60位、昨年は41位)」を意識した味わいであった。
Restaurant La Cime
3-2-15 1F Kawaramachi,Chuo-ku,OSAKA 5410048 JAPAN
Tel./Fax. +81(0)6-6222-2010
Contemporary French Restaurant in Osaka.
Ranked as one of Asia’s 50 Best Restaurants and listed as 2 Michelin Stars.

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