前回に続き「ザ・リッツ・カールトン大阪(The Ritz-Carlton Osaka)」の話。5階レストランフロアに降り立ち、パラソルが点在する緑豊かな中庭を横目に奥の「フランス料理 ラ・ベ(La Baie)」に向かう。このホテルのメインダイニングは2019年3月にリニューアルした。
木のぬくもりや絵画など「18世紀ヨーロッパ」のイメージはそのままに、ミルワーク装飾や手掘り細工が施された家具に一新。赤のチェアーやクッション、赤い照明などを取り入れ、華やかなモダンヨーロピアンスタイルになった。

リニューアル時にワイングラスも全てリーデル製ハンドメイドグラスに統一し、加えて個室「リーデル・ルーム」も作った。キャビネットにはデカンタと共にグラスがディスプレイされている。
シンメトリーが美しいダイニングに入ると、天井にはアンティークゴールドに赤いシェードのシャンデリアが光る。その下に大輪の赤い薔薇がぎっしり詰まったドームのフラワーアレンジメントが何とも豪華だ。デートや記念日にぴったりのフレンチらしいロマンティックな空間は、席間も余裕があり心地よい。ホテルらしい折り目正しいサービスも素晴らしい。

爽やかなフィンガーフードと共に、まずは軽くグラスシャンパーニュ「ボランジェ スペシャル・キュヴェ・ブリュット(Bollinger Special Cuvee NV)」で乾杯。アミューズブッシュには「キャビア コンディメントとブリニストーストを添えて」を追加しよう、キャヴィア好きには嬉しい一品だ。
オシェトラとベルーガからチョイスできるのだが、もちろん「ベルーガ(+ 38,000円)」にする。数種の薬味にサワークリーム、ふわふわミニブリニーにベルーガを乗せて妻は嬉しそう。もうこれだけで既に満足している(笑)

保温箱に入ったパン2種と、「ボルディエバター(Le Beurre Bordier)」のプレーン(タワー)と海藻入り(ホール)がワゴンでサーブされた後、運ばれて来たのは「冷製蒸し岩牡蛎 ベンジャ産胡椒のエキューム グレッグレギューム平兵衛酢」。美しく色鮮やかに盛り付けられた爽やかな前菜だ。
カメルーンの高級胡椒を利かせた白い泡が印象的。冷製の岩牡蛎は底に潜んでいるが、酢のジュレとともに爽やかに口中で海の味わいが染み出てくる。優しくもフレンチらしい着地の味わい。

ここでシャンパンをボトルで開けよう。400種類以上のワインがそろったワインリストは見飽きない。選んだのは「エグリ・ウーリエ ブラン・ド・ノワール グラン・クリュ 2021(Egly Ouriet Blanc de Noirs Grand Cru)」。ピノ・ノワールの聖地アンボネイ村のレコルタン・マニピュラン「エグリ・ウーリエ」だ。
1930年創業だが、4代目当主フランシス・エグリから評価が上がった。黒葡萄のみから赤ワインのように作られる「ブラン・ド・ノワール」は彼の代表作だろう。我が家も大好きな1本だ。アンボネイの樹齢50年超のピノ・ノワールを中心にシャルドネをブレンド。2016年の葡萄を主体に造られ2021年に澱引き。ドサージュは1g/L。

ジャック・セロスにも引けをとらないにも関わらず、低価格も魅力だったが、今では高騰しなかなか手に入りにくくなった。美しいオレンジ色にクリーミーな泡がグラスに盛り上がる。ラズベリー、茎、ジャスミンティ。ピュアな果実味の旨味が凛としたミネラルの骨格の中、洗練された酸とともに長い余韻を奏でる。ドミニク・ローランから学んだ樽使いも特徴だが、上質な酒質に見事に溶け込んでいた。
そこへ運ばれたのが「オマールブルーの炭火焼き かぼちゃとシェリー酒のオマールジュ 鈴南瓜」。テーブルでオレンジ色のソースが注がれて完成する。表面から炭火で火を軽く入れたオマールブルーはねっとりとした食感と甲殻類の旨味がなんとも美味しい。オマールのジュにかぼちゃの風味とシェリー酒のニュアンスを加えている。

ラ・ベは6年連続12回目の「ミシュランガイド京都・大阪 2023」1つ星。クリストフ・ジベール(Christophe Gibert)料理長はフランス・ブルターニュ出身。「スポーティングクラブ・ド・モンテカルロ」やパリ「ラ・ターブル・ダンヴェール」「ルカ・カルトン」、南仏「ネグレスコ・ホテル」など名店を経て来日した。
2002年「ラ・べ」副料理長に、2006年より料理長を務めている。奥様は日本人、神戸の海の近くに住んで1時間かけて通勤しているそうだ。欧州産オマール・ブルーやブルターニュ地方のボルディエバターなどに加えて、日本の食材にも精通する。クラシックの基本を押さえつつ、美しくモダンで現代風の味わいは魅力的だ。つづく・・
French Restaurant La Baie
The Ritz-Carlton Osaka 5F
2-5-25 UMEDA KITA-KU,
OSAKA, JAPAN, 530-0001

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