暑さが残る初秋の京都。宿泊したのは二条城が前にある「ホテル ザ ミツイキョウト(HOTEL THE MITSUI KYOTO)」。三井家ゆかりの地に2020年に開業したスモールラグジュアリーホテルだ。「エグゼクティブスイート」に連泊中の1夜、ホテル内のレストランでゆっくり過ごそうとチョイスしたのは、シグネチャーレストラン「都季(TOKI)」。2022年10月にイノベーティブ京都フレンチとしてリニューアルした。
ちなみにもうひとつのレストランは、伏見稲荷神社の千本鳥居をイメージした廊下向こうにあるイタリア料理「FORNI(フォルニ)」。薪窯で焼き上げるピッツァやグリル料理、清水焼3000枚の花結晶ウォールアートが堪能できる。どちらのレストランも、ライトアップされた美しい水盤の庭園を眺めながら「庭屋一如」の料理が楽しめる。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

ロビー一角「ライブラリー」の前にあるのがレストラン「都季(TOKI)」。店内は照明をかなり落とし雰囲気がある。庭側は全面ガラスで灯篭のあかりが浮かぶ庭園との一体を図っているのだろう。各所に京友禅や西陣織のアートが飾られ上質な和モダンの情緒だ。
ホテル開業時は「ガストロノミー鉄板料理」と銘打っていたらしい。その為だろう、店内中心には樺桜の一枚板を使用した鉄板カウンターが伸びる。そこに数人の白いコックコートを着た料理人たちが調理している。浅野哲也料理長は「リッツ・パリ」「エスパドン」「ホテルオークラ アムステルダム」などを歴任した。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

老舗料亭「菊乃井」とも交流を深め日本料理の技術を習得し、フランス料理と日本料理を融合した「イノベーティブ京都フレンチ」として提供する。去年のリニューアルにあたり新たなコンセプトにしたのが、京都で作るフレンチの「フォン(出汁)」。そこでまず最初に出てきたのが「伏水のお白湯」。伏水とは伏見の酒に使われる伏流水だ。硬度61だけあってまろやかな味わい。
続いて3種類の出汁(野菜出汁・鰹出汁・鴨出汁)で作られたアミューズ「だしのスナック3種」。トマト・玉ねぎ・バジルの旨味を層にした美しい一品は、イメージよりもかなり強い味わいだ。器も清水焼などそれぞれ個性的。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季 Dom Ruinart Blanc de Blancs

シャンパーニュ「ドン・ルイナール ブラン・ド・ブラン(Dom Ruinart Blanc de Blancs Extra Brut) 2010」と一緒に味わう。こちらはワインリストが充実しているのも売りだ。グラスで「ドン・ルイナール」を用意しているところも嬉しい。
1729年創業の世界最古のシャンパーニュメゾン。シャルドネハウスと言われるだけあり、ブラン・ド・ブランのドン・ルイナールは定評がある。細やかな泡立ち。ステンレスタンクによる発酵だが木樽発酵のようなニュアンスも感じるのは8年もの熟成期間を経ているからだろう。洗練されたピュアな果実が美しい酸と一緒に心地よく広がる。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

次は「くぬぎ鱒 西京味噌 いくら」、海藻をかたどったチュイルも美しい。富士山の麓の鱒を西京味噌に5日漬け込んだ。発酵させた野菜に燻した出汁のジュレを添えている。かなり旨味を感じる独特の味わいだ。
続いて「京都伊根 向井酒造の酒粕 フォアグラ」が登場する。京都らしく竹櫛に刺した味噌田楽に見立てたフォアグラだ。上に塗ってるのは、向井酒造「伊根満開」の酒粕を2年も熟成させた「なれ」。味噌と言うより酸味あるカカオ風味。浅野料理長が味わった際にカカオのニュアンスを感じた事から、定番「フォワグラとチョコレート」の再構成として利用したと言うのも頷ける。せっかくなので「伊根満開」の生濁りも頂く。紫の器とぴったりの色合い。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

続く「ガスパチョ」は黄金の大皿で運ばれる。白身魚のブランダードを浮かべバジルのオイルも垂らした。フレンチらしい王道の美味しさだ。そして「鹿肉のカルボナード」、いわゆるビール煮込みだ。1ヶ月間熟成した鹿肉は京丹後 「上世屋」のもの。途中にパンと酒粕バターも置かれる。
ここでお願いしたのはイタリアのスーパータスカン「アンティノリ ソライア(Antinori Solaia Antinori)1990 」だ。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたボルドータイプなので、料理とも合うのではないかとチョイスしてみる。コルクはかなり乾燥していた。熟した黒果実、鉄分、オリエンタルスパイス、ハーブ、土と木の皮のニュアンス。アタックはシルキー。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

中心部分の果実味はまだ生き生きとしている。やや短めの余韻には干し葡萄のニュアンス。あまり広がらなかったが洗練されたエレガントな熟成感を楽しめた。そして季節の京野菜とを合わせた魚料理「鯛 鴨茄子」がやってきた。大葉のオイルに鳥節と魚介のスープが注がれて完成する。ペースト状の鴨茄子も添えられて京都らしく仕上げた。
次は「国産黒毛和牛 あおき農園 有機野菜」。野菜はホテルの使用済コーヒー豆の粕を肥料にした「自然耕房あおき」のもの。肉表面を均一に焼き上げ旨味を引き出し、ポルトソースを流した。「雲井窯」の焼き物を使うなど、細かなこだわりを随所に感じる。

HOTEL THE MITSUI KYOTO TOKI ホテル ザ ミツイキョウト 都季

最後にさっぱり「桃のソルベ」、続いてボリューミーな「伏見のかき氷」で閉める。小菓子「マドレーヌ」はお土産にして、翌朝ルームサービスの「カプチーノ」と共に頂いた。フレンチと和食の融合というコンセプト。味わいはなかなか独創的であり、とにかく面白い工夫が満載ではあった。

HOTEL THE MITSUI KYOTO, A LUXURY COLLECTION HOTEL & SPA

284 NIJOABURANOKOJI-CHO, ABURANO-KOJI ST. NIJO-SAGARU,
NAKAGYO-KU,KYOTO, KYOTO, JAPAN, 604-0051