先日紹介した「ザ・リッツ・カールトン福岡(The Ritz-Carlton Fukuoka)」は、福岡市中心部に今年6月開業した。25階建て「福岡大名ガーデンシティ・タワー」高層部9フロアを使用し、福岡城跡や大濠公園、福岡タワーに博多湾、志賀島など美しい景色を一望できる。
館内はオーストラリアに拠点を構えるLAYAN Architects + Designers 監修のインテリアデザイン。伝統工芸「博多織」を全体イメージにしたコンセプトだそうだ。籃胎漆器や久留米絣、九州の職人による有田焼などの器・絵画も飾られている。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

1階と18階のエレベーターホールに飾られている屏風は「月と玄界灘」を表現した華やかな麻殖生素子氏の作品。18階ロビーフロアには半澤友美氏のシックな繊維のアートも見える。その18階に3つのエリアに分かれた日本料理「幻珠(Genjyu)」会席・鮨・鉄板焼きがある。前回は「幻珠 by 鮨 将司(Genjyu sushi by masashi)」を紹介したので、今回は「幻珠 会席」の話にしよう。
フロア通路奥にはオブジェの一枚岩が鎮座する。そこから右入ると「幻珠 by 鮨 将司」、そのまま奥に進むと広がる「幻珠 会席」。その会席エリア内の更に奥に「幻珠 鉄板焼き」がある。全てが真新しい空間には、小石原焼などの器が美しく並べられ、博多織デザインも随所に見て取れる。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

南向きの窓からは平尾・薬院側の山々、西向きの窓からは福岡城跡や大濠公園、遠くには博多湾が夕日に照らされ煌めいている。西日が刻々と沈んでいく様が何とも美しい。西日が強くなったところで、着物姿の「幻珠」マネージャー橋本愛子氏がスクリーンをサッと下ろしてくれる。彼女は京都出身で以前はフォーシーズンズ京都「鮨 和魂」におられたとの事。
そして「幻珠 会席」の料理長は、京都「高台寺和久傳」や東京「銀座 ふじやま」で腕を磨いた中島弘貴氏。風情も味覚も完全に本物の京都レストラン的に楽しめるのだ。これは博多では珍しく貴重と言える。この夜は玄海灘で獲れた新鮮な魚介類と九州各地の厳選食材を取り入れた会席コース「天穹(Tenkyu)」全8品をお願いした。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

まずは乾杯。ワインリストはホテル内共通なので「幻珠 by 鮨 将司」時同様グラスシャンパン「ルイナール ブラン・ド・ブラン ブリュット(Ruinart Blanc de Blancs Brut)」を頂く。世界初のシャンパーニュ・メゾンとして1729年に創業したルイナール。クリアボトルから美しく輝くゴールドが注がれる。
香ばしくも爽やかな果実の甘みが美しい酸とミネラルと調和し、夏らしく気分に合う。そこに運ばれた先付は「とうもろこし摺り流し トマト出汁ゼリー 生雲丹 雷干し 花穂紫蘇」。美しくインパクトある演出だ。大濠公園に群生する蓮の葉から料理長が発想を得た一品。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

蓮の葉に乗せられたトマト出汁ゼリーを器に落として頂く。甘さと爽やかさの後にウニの海の苦味と食感がおいかけてくる。繊細ながら立体感のある先付けである。続く椀物は「九州産車海老 冬瓜含め煮 丘若芽 柚」。しっかりした旨味の出汁が京都らしい味わい。蕩けるような冬瓜の食感と、車海老の旨味と共に味わう上質の椀に満足度が高い。
向付は玄界灘で獲られた魚介類「九州産 鮮魚 二種 炙り 一種」。上質のコチ・クエ・マグロを、地元産「ジョーキュウ醤油」とポン酢で頂く。そして華やかな焼八寸「イサキの焼き物 南京含め煮 真蛸柔煮 木の芽 枝豆かき揚げ 水前寺菜お浸し 鱧ザク 茗荷 胡瓜 胡麻」。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

ここで白ワインもグラスで頂く。カリフォルニア、ナパヴァレー「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ ”カリア” シャルドネ 2009(Stag’s leap wine cellars KARIA chardonnay)」だ。ナパらしい程よく樽の利いたシャルドネ。完熟したフルーツにレモンが料理との接点も探ってくれる。運ばれた口直しは「鮑 素麺南京 梅 喰い出汁 マイクロハーブ」。鮑のしゃぶしゃぶを梅肉でさっぱりと仕上げてある。
炊き合わせは「丸茄子揚げ浸し 九州産黒毛和牛スライス 夏野菜 吉野煮 山葵」。食感の残ったオクラと蕩けるような丸茄子のコントラスト。山葵と共に頂く黒毛和牛をメインに、吉野煮の出汁の濃さがまた美味である。満足度の高い焚き合わせだ。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

赤ワインもグラスで頂いた。サルヴァトーレ・フェラガモ家が所有するトスカーナの「イル・ボッロ 2017(IL BORRO)」。バランス良く凝縮された赤黒系果実が洗練された酸と調和する飲みやすく、また飲みごたえもある赤だ。御飯は「柳川鰻丼 木の芽 香の物 肝吸い 三つ葉」。お腹具合でご飯の量も尋ねてくれる。パリパリの食感の鰻丼ですっかり満足満腹だ。最後の水菓子は「柿 八女抹茶大福」。どの料理も有田焼や唐津焼の器で提供されるのも良い。
京都らしい中島料理長の会席は「その土地が秘めた素晴らしい食材を紹介する」とのコンセプトだけあって、九州の厳選食材を使いながら丁寧に仕上げてある。ゆとりのある空間で、的確なサービスで頂く和食はかなり満足感あるものであった。

ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 会席 The Ritz-Carlton Fukuoka Genjyu

The Ritz-Carlton Fukuoka
FUKUOKA DAIMYO GARDEN CITY 2-6-50, DAIMYO, CHUO WARD,
FUKUOKA, JAPAN, 810-0041