大阪「中之島フェスティバルタワー・ウェスト」の最高層33階から40階に位置するヒルトングループ「コンラッド大阪(CONRAD OSAKA)」。宿泊した日のディナーは40階のロビーフロアにあるレストラン「蔵」にする。40階は38階アトリウムからの吹き抜けに白い螺旋階段、多面ガラス張りから地上200mの大阪の街を見下ろせる素晴らしい造りになっている。
フロント側に行くとマイクロビーズの球体、名和晃平氏による風神雷神像モチーフ「Fu / Rai」が鎮座。フロント壁にはカナダのブレント・コマー(Brent Comber)氏の水脈を木で表現している「Vein」 。フロア奥の「40 スカイバー&ラウンジ」にはキラキラクリスタル、松尾高弘氏作の「AURA」。その隣オールデイダイニング「アトモスダイニング(atmos dining)」には西川慎氏の、吹きガラスに金箔の「水紋」など様々なアートを見る事ができる。

そんな40階、エレベータ降りてすぐ左側にあるのが鉄板焼&寿司「蔵」だ。ライトアップされた長い廊下の奥に広がる空間は、4つの鉄板焼カウンター(最大8名)と寿司カウンター(全9席)に分かれている。この夜は「蔵 鉄板焼」で、大阪南側のスカイラインが美しいパノラミックな夜景とともに、松阪牛や鮑・伊勢海老などたっぷり堪能できるコース「天満月(AMAMITSUTSUKI)」を頂く。
担当してくれたのは爽やかで前途有望な若き廣谷皆太氏。磨き込まれた美しい鉄板で職人技を拝見しつつ彼との会話も盛り上がる。今から調理される生きた伊勢海老、綺麗にさしの入った松阪牛、焼き野菜達がドンとカウンターに並べられる。こういうデモンストレーションも鉄板カウンターの楽しさだ。

まずはグラスシャンパンで乾杯しよう、こちらは充実したワインメニューも秀逸だ。1811年エペルネに創業した老舗シャンパニュ・メゾン「ペリエ・ジュエ」。プレステージ・キュヴェ「ベル・エポック(Perrier Jouët Belle Epoque)」のエミール・ガレ作「白いアネモネ」は有名だ。この夜頂いたのはスタンダード・キュヴェ「ペリエ・ジュエ グラン・ブリュット(PERRIER JOUET GRAND BRUT)」。
アネモネ柄の専用グラスに細やかな泡が立ち上る。柑橘の上質な香りからエレガントな酸が余韻に旨味を広げる。ボトルによって比率は変動しているが、ピノ・ノワール40%~50%、ピノ・ムニエ40%、シャルドネ20%程度。30~40ヶ所のクリュをブレンドして3年熟成。ピノノワールの比率さが骨格を形作るが、印象的にはシャルドネやピノ・ムニエの雰囲気が強い。

そこに運ばれたのは、蔵から一品「鉄板で仕立てたローストビーフ」。サラダの上に分厚いリッチなローストビーフが乗せられている。合わせて提供されるのは旨味も凝縮した「夏野菜と鮑の冷製、和風ジュレ仕立て」だ。こちらも上質の鮑がどんと提供される。乗せられたジュレの旨味と爽やかさが「ペリエ・ジュエ」にもぴったりだ。
続いて、寿司シェフより「松阪牛炙り寿司 2 貫 キャビア、雲丹」。大きな松阪牛がシャリを覆いつくしている。なんとも贅沢な寿司である。こういう料理も鉄板ならではのアクセントな楽しみだろう。

そこで赤ワインはボトルで開けることにする。立ち振る舞いもおしゃれなフランス人ソムリエと相談して決めたのは「シャトー・フィジャック 2012(Chateau Figeac)」。ポルドー右岸、サン・テミリオンで好きな一本だ。シュヴァル・ブランの丘から道路挟んですぐの畑というだけでポテンシャルが伺える。
手さばきも優雅に丁寧に抜栓。10年経ってるが、まだまだ若々しくグラスの向こうが見通せない色合い。ブラックカラント、杉、メントール。非常にエレガントなアタックながらしっかりした果実味がある。綺麗な熟成の途中だろう、滑らかなタンニンと酸が中盤に広がる。大きくはないが上質な鉄板焼きと見事なハーモニーを奏でてくれた。

陽が落ちて夜景が浮かび上がってくる街並み、そして手慣れた風情の廣谷シェフが目の前で仕上げてくれる様子、それらを交互に見るのも楽しい。そして、鉄板からすぐ目の前に「活けイセエビ、柑橘バターソース」が置かれた。バターの甘い香りが立ち上がる。アツアツぷりぷりの伊勢海老に濃厚なバターはさすがに良く合う。エンターテイメントなプロの腕前に感心する。
口直しに「洋ナシのソルベ」でさっぱり。続くメインにお願いしたのは「特選松阪牛フィレ 80g」だ。こんがりと仕上げられた表面と微かに熱の入った赤い断面のコントラスト、絶妙な焼き加減に思わず唸る。多種多様の薬味も面白い。アスパラガス、カボチャなど「季節の焼き野菜」も添えられる。

京丹後産こしひかり「釜で炊き上げるご飯」は、銅釜ごと目の前の鉄板上で炊き上げるからびっくりだ。ふっくら真っ白なご飯と「京都宇治平飼い卵ワビスケ、湯浅醤油」で、わざわざガーリックライスにして頂くのは最高の贅沢だろう。目の前で立ち上がるガーリックの香ばしさが、結構満腹だったのに食欲をそそる。カウンター隣の席のお客さんと思わず目が合い「これ美味しいですよね」とお互い頷いてしまう(笑)
「赤出汁、香の物」と一緒に頂き、すっかり満腹の中「季節のデザート」で締めくくられた。ホテルらしい立派なシチュエーションの中、厳選食材を使った鉄板の良さを前面に出したレストランだ。職人技の見せ方(パフォーマンス)も良く分かっている。ワインとともに上質の時間を過ごすことができ満足度の高い一夜であった。

CONRAD OSAKA
530-0005, Osaka, 3-2-4 Nakanoshima
Kita-ku, Japan

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