前回に続き、恵比寿ガーデンプレイス内「シャトーレストラン ジョエル・ロブション(Château Restaurant Joël Robuchon)」2階、キラキラゴールドのダイニング「ガストロノミー ジョエル・ロブション(Joël Robuchon Restaurant)」にてのディナーを紹介していこう。今年で30周年を迎えるロブション、私にとっても沢山の思い出がある。
いつもの奥の席で、担当してくれる三上雅行プルミエ・ソムリエやサハビィ・ムスタファ(Sahbi Mustapha)プルミエ・メートル・ドテルと歓談しつつ、昨年「M.O.F.(フランス国家最優秀職人章 Meilleur Ouvrier de France)」を受章した関谷健一朗エグゼクティブシェフの料理を堪能していこう。

シャトーレストラン ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

この夜は、ジョエル・ロブションの最高傑作料理の数々を集めた「Menu Dégustation」にする。アミューズ、前菜1・2皿目と来た。そしてまだまだ続く多皿セットメニュー、前菜3皿目は「La Soupe de Poisson avec une nage de legumes de saison sous un nuage アイオリをのせた軽やかなメレンゲに未利用魚を使ったスープ・ド・ポワソンを注いで」。傷がついたり、サイズが揃わないと言う事で廃棄される未利用魚。新鮮な「未利用魚」を使ったスープ・ド・ポワソンを通じて、世界的な水産資源の損失について思いを馳せて欲しいというメッセージを込めた一皿だ。
「La Langoustine truffee et cuite en ravioli au chou vert ラングスティーヌと黒トリュフのラヴィオリ キャベツのエテュヴェを添えて」は、すっかりロブションの定番と言えるだろう。
「Le Hokkigai en marinieres sur une sauce legere de beurre blanc aromatise au Yuzu Kosho 北寄貝のマリニエール 柚子胡椒を効かせたブールブランソースと共に」。肉厚の北海道産北寄貝に、ブールブランの旨味が重なる。更にほんの微かな柚子胡椒の風味と野菜の食感がアクセントだ。

ガストロノミー ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

小さめのポーションが多皿で提供される、さすがにこれは作る側が大変だろう。更に4皿目は「Le Homard roti accompagne de pousses de bambou aux sucs de Chateau-Chalon オマール海老のロティと筍のポワレ シャトーシャロンのソースで」は、こちらもロブションらしい王道の一品。「シャトー・シャロン」が好きだと言っていた故ジョエル・ロブション シェフの笑顔を思い出す。
「Le Hirame cuit a la vapeur dans une nage de calamar ″Aoriika” au beurre d’algues acidule 海藻バターで優しく火を入れた平目とアオリイカのハーモニー」も添えられた。

ガストロノミー ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

そしてメインは「La Cote de Veau du Limousin mitonnee en cocotte au jus, pastoral aux herbes en salade et la fameuse pomme puree de Joel Robuchon フランス産仔牛のロティ ポムピュレとハーブのサラダを添えて」。運ばれて来た特製ボックスの蓋を開けると、香ばしい煙と共に大きな肉塊が登場する。目の前で少し火入れをしデクパージュ(decoupage)してくれる。
三上ソムリエがこれに合わせて選んでくれたグラスの赤ワインは、ボルドー・サンジュリアン2級「シャトー・デュクリュ・ボーカイユ 1988(Chateau Ducru-Beaucaillou)」。1級に限りなく近いスーパーセカンドと呼ばれる。1953年創業のシャトーだが、1795年に所有者となったベルトラン・デュクリュ(Bertrand Ducru)の名と、畑に広がる直径5cmの「Beaucaillou(美しい小石)」からとって当時改名された。現当主はブルーノ・ボリー(Bruno Borie)。

シャトーレストラン ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

華やかなゴールドのラベルには、ジロンド河を見下ろす美しきシャトーが描かれている。そんな「デュクリュ・ボーカイユ」は我が家の定点観測ワインの1つ、セラー室にはいつも10数本は眠っている。フランスで購入してきたダブルマグナムボトル(3L)も鎮座する。タイミング的にも思い出がある1本だっただけに、三上ソムリエのチョイスがとても心に沁みる。
言うまでもなく「1988年」「1989年」は当たり年、「1982年」に匹敵する収穫量となった。カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロー25%、カベルネ・フラン5%だ。熟れた黒い果実・おがくず・グローブ・・・エレガントなブーケだ。アタックは羽根のように軽い。そしてタンニンはシルキーに溶け込んでいる。

シャトーレストラン ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

飲み干した後に爽やかなハーブを伴った旨味が程よく残る。チャーミングな果実感が綺麗に濾過されたような旨味に昇華している。ワインをじっくり楽しんでいる所へ、ロブション開業時からのメンバー30年選手の原田聡メートル・ドテルが、別のエリアからわざわざ挨拶に来てくれた。皆さんの近況などを伺い懐かしい気持ちで楽しく話す。コロナ期の影響で客層も変化しているそうだが、なるほどダイニングの雰囲気も確かに以前とは違うかもしれない。
そこに運ばれたのは「チーズワゴン」。ロブションの「Les Fromages de nos Regions selectionnes par nos soins フランス産フロマージュ」は保存も良く種類も豊富だ。「モンドール」「エポワス」など食べ頃をいくつか見繕ってもらう。

ガストロノミー ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon チーズワゴン

デザートは「Le Cheese Cake Fraise mousse legere a la vanille de Tahiti au parfum de citron vert チーズケーキ 苺のジュレにシトロンヴェールとタヒチ産バニラの香りをあしらって」。甘い香りがテーブルいっぱいに流れる。チーズケーキのまろやかさが、イチゴとシトロンの酸味と相まって何とも美味。今シーズンはどこのレストランでもイチゴが沢山登場するが、アレンジも様々で楽しい。
一息つく頃、今度は「Le Cafe ou le The agremente de mignardises カフェとミニャルディーズ」だ。いつもの様にハーブティをお願いする。

シャトーレストラン ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon

そしてお待ちかね、ロブションらしい豪華さの「デザートワゴン」が登場する。季節ごとの華やかなディスプレイも楽しい。1台目のワゴンには、タルトやショコラ、クッキーにマカロン、ゼリーにギモーブなど多種類揃う。ホールケーキやアイスクリーム、シャーベットなどはまた2台目のワゴンだ。
その中からそれぞれ好きなスイーツを選ぶ。もうとにかくお腹いっぱいなので気持ちだけ頂き、満足な気分でディナーを閉めた。そうそう、会計時の「merciキャンディー」もお馴染みだ。お土産には「朝食にどうぞ」と大きなパンを頂く。

ガストロノミー ジョエル・ロブション Château Restaurant Joël Robuchon デザートワゴン

帰りは、三上ソムリエやサハビメートル・ドテルと賑やかに話しながら、寒い中車まで見送ってもらう。これから桜咲く春のお祝いシーズン、ロブション城は更に華やかな賑わいを見せる事だろう。

Joël Robuchon Restaurant
Yebisu Garden Place, 1-13-1, Mita, Meguro-ku, Tokyo 153-0062
Tel 03-5424-1338 Hours 11:00 to 21:00