気付けば桜満開の4月、仕事もプライベートもバタバタしてブログが後回しになってしまった・・・ この夜向かったのは、大手町タワー最上階部33~38階にある「アマン東京(Aman Tokyo)」。我が家ではすっかりお馴染み、2014年にオープンした「アマンリゾーツ」による都市型ホテルだ。
エイドリアン・ゼッカ(Adrian Zecha)が1988年に創業。プーケット「アマンプリ」を皮切りに今や世界20か国34のリゾートやホテルを展開中。日本国内では「アマン東京」「伊勢志摩 アマネム(AMANEMU)」「アマン京都(AMAN KYOTO)」。どれも設計は、2018年に亡くなった巨匠ケリー・ヒル(Kerry Hill Architects: KHA)。

ちなみに新しい街「麻布台ヒルズ」に先月オープンした「ジャヌ東京(Janu Tokyo)」は、アマンリゾーツ姉妹ブランドホテルで日本初進出だ。レジデンスAの1階~13階に位置し「ペリ・クラーク & パートナーズ(PC&P)」が外観設計、内装は「ジャン・ミッシェル・ギャシー(Jean-Michel Gathy)」が担当している。
話を戻して「アマン東京」。エントランスは洞窟のように静かで暗めの禅なる世界。人力車も並び横には別棟「ザ・カフェ by アマン(The Cafe by Aman)」も。壁には麻紙に描かれた菅原建彦の炭画、エレベーター前には左官技能士・挾土秀平の土壁アートが飾られる。

このホテルは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」関係者の御用達でもある。コロナ前はニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)や故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)、キム・ジョーンズ(Kim Jones)など来日の度に宿泊していた。
彼らに人気はやはり33・34階と吹き抜けになっている「ブラックプール」だ。全長30mの黒いプールは天井までガラス張りになっていて開放感がある。早朝など人がいない時間なら禅なる空間といったところか。

メインフロア33階「ガーデンレセプション」では、壮観な吹き抜け天井(5フロア分)が出迎える。障子をモチーフの「ランタン」は圧巻の景色だ。レセプションデスクは樹齢250年の楠木、黒い玄武岩の床・壁が広がる。中央には巨大生け花、この日は咲き誇る梅の花だった。そして方々に玉砂利と巨石の石庭、コンテンポラリーな中庭だ。フロアを囲む縁側に沿って「ライブラリー」「イタリアンレストラン アルヴァ(Arva)」などが並ぶ。
そこから黒い階段を上がった34階に江戸前鮨「武蔵 by アマン」。今宵はこちらでディナーを頂こう。入り口ではスタッフが笑顔で出迎えてくれる。暖簾を潜り、左官職人・久住有生の土塀や、庵治石飛び石のアプローチを進むと、明るくて開放的な心地よい空間が広がる。

鮨職人40年の経験を持つ武蔵宏幸氏が青山の人気店「鮨 武蔵」を閉じてこちらにオープンした。無垢の檜カウンター(8席)に沿った連子窓からは美しい夜景が見え、作家の焼物やバカラの招き猫が並んでいる。内装は白漆喰や楠木無垢板の壁など温かみある空間で、テーブル席も2つある。2022年に亡くなった橋本夕紀夫氏が空間デザインした。
まずは乾杯、グラス・シャンパン「デュヴァル・ルロワ ブリュット・レゼルヴ(Duval Leroy Brut Reserve)」で喉を潤す。「おまかせ」は外国人にも分かりやすいようにメニューに「Omakase(Tsumami/Nigiri)」などと表記されている。

ツマミは「平貝と車海老」、美しくも柔らかなスタートだ。先付は「鯛、昆布締め、鮪」。鯛にはウニを巻いて贅沢に。風味ある赤身は温度をやや上げてあり、舌先に魚本来の味わいを感じやすい。
次にお願いしたグラス白ワインは「ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ リュリー プルミエ・クリュ クルー・ブラン 2018(Domaine de Villaine Rully 1er Cru Cloux Blanc)」。続いて出されるは季節を感じる「鰺梅花焼き」。大根の上に脂の乗った鯵が鎮座し、香る梅の酸味とバランス良い味わいだ。

そして器も上品で美しい「九絵ちり蒸し」は、さっと火を入れたクエ(アラ)が口の中でホロリとほどける。上質な身質に加えた繊細な技術による仕上がりが光る。さらに登場するのは、ドーンと食べ応えある「トロ ステーキ」。満足度が高まっていく。
さぁここで手渡しで渡されるのは「穴子 胡瓜」の巻物だ。こちらの名物と言えるだろう。穴子の蕩ける食感と胡瓜の歯応えが、海苔の風味と共に何とも調和してる。そしてここからは「握り」に入っていき、10貫ほどが出される。ベテラン武蔵氏の背筋の通った所作は美しい。長い指で丁寧に握られていく鮨は、見る過程も美味しい。

「細魚」は優しくもしっかりしたシャリと調和する。そして「鮃」。「槍烏賊」はねっとりした食感と甘さがシャリと混然となる。「赤身」「中トロ」と続き、「小肌」は程よい締め具合が温かさの残るとシャリと渾然一体となる。ここで次の白ワイン「ファミーユ・ヒューゲル リースリング グロシ・ローイ 2012(Famille Hugel Riesling Grossi Laue)」をグラスで頂く。
「カワハギ」に続いて「車海老」はシャリと何とも美しいバランスを見せ、甲殻類の旨味を余すところなく伝えてくる。満足度の高い「トロ」に続くのは、手渡しで頂く北海道産の雲丹。プリプリ濃厚な旨味の雲丹に紫蘇を合わせて軽く巻いてある。こちらも絶妙なバランスだ。

そして染み渡る「自家製味噌のお椀」に、スイーツの様な「玉子焼き」までの一通りだ。美しくバランスの良い、穏やかな握りはスルスルと胃に収まっていく。デザートの「イチゴ」で締めら、気が付けば丁度よい塩梅であり満足した。江戸切子職人・堀口徹のお猪口や、陶芸家・タナカシゲオの器などもあるが、武蔵氏が自ら作った器も登場する。さすが器用だ。
開業当初「アマン」が引き抜いただけあり、ホテルの雰囲気に合った大人のクリエイティブな鮨屋。饒舌ではないが心配りが感じられる武蔵氏、そしていつもながら丁寧で心地よいサービス陣。そんな洗練され落ち着いた江戸前寿司を堪能出来た春の夜であった。

Aman Tokyo
The Otemachi Tower
1-5-6 Otemachi Chiyoda-ku
100-0004 Tokyo
Japan

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