我が家で「ドン・ペリニヨン(Moet & Chandon Cuvee Dom Pérignon)」と言えば、平日の乾杯として良く開けるシャンパン。私は「サロン(Salon Blanc de Blancs)」「ジャック・セロス(Jacques Selosse)」「エグリ・ウーリエ(Egly Ouriet)」などが好きなのだが、妻がドンペリ好きなのでセラー室の在庫には欠かせない。
冷やして気軽に飲める若いヴィンテージから消えて行くが、時々セラーの奥からひょっこりと顔を出す古いヴィンテージもお楽しみなのである。言わずもがなLVMHグループであるモエ・エ・シャンドン社はシャンパーニュ最大の畑所有者。昔は「ルイ・ヴィトン」に買い物に行くと「ドン・ペリニヨン」が出されていた。

P2 2000 Dom Perignon Plenitude2 vintage 2000

「ドン・ペリニヨン」の平均的な葡萄品種の比率はシャルドネ55%、ピノ・ノワール45%。シャルドネは「シュイィ」「クラマン」「アヴィーズ」「ル・メニル・シュール・オジェ」、ピノ・ノワールは「アイ」「ブジー」「ヴェルズネイ」「マイィ」「オーヴィレール」といった具合だ。
昨日開けたのは「ドン・ペリニヨン 2005(Dom Perignon vintage 2005)」はシャルドネ60%、ピノ・ノワール40%。2005年は寒暖差が大きいながらも全体として暖かく雨が少ない年。8月は酷暑だったが9月は雨量が多かった為暑さが和らいだ。結果生産量が例年の半分近くになったが、ドン・ペリニヨン側曰く「葡萄畑での徹底した選別の結果、極めて良質な葡萄ができた」「これまでになり円熟した芳香になった」と評している。

Dom Perignon vintage 2010 レディ・ガガ ドンペリニヨン

グラスにはグリーンかかったイエローが揺れ、ドンペリらしい緊張感のある還元香が立ち上がる・・グレープフルーツのコンポート、その皮をかじったようなほろ苦さが舌の上に長く残る。「2004年」より熟したニュアンスがある。その意味ではお気に入りの「2003年」の方に近いか。
その前に開けたのはレディー・ガガ(Lady Gaga)とのコラボレーションによる限定品「ドン・ペリニヨン 2010(Dom Pérignon Vintage 2010 LADY GAGA Limited Edition)」。「波のように変化を起こす創造力を体現したラベル」が印象的だ。しかも過去30年間で最高の出来と言う触れ込みでリリースされた。去年には同レディー・ガガシリーズの「ROSE 2006年」を開けた。

そして先週末に開けた「2009年」は、グレープフルーツ皮、トーストしたブリオッシュの香りが、雨上がりの夕方に合う。そういえば「2009年」は「2008年」より先に発売された。ヴィンテージの順番を変えて発売するのは初めてだった。「2009年」は温暖でリッチな味わいになったため、冷涼な「2008年」より早く最初のプレニチュードが来るからとの事。
「ドン・ペリニヨンは瓶熟成の8年・16年・25年~30年の3回にわたってプレニチュードに達する」と言う考え方だ。思えば「ルイ・ロデレール クリスタル」も同様に「2009年」を先に出している。通常の「ドン・ペリニヨン」も8年の熟成を経てリリースされるが、ブラックラベルの「P2(旧エノテーク)」は更に16年の熟成を経る。

ドン・ペリニヨン Dom Perignon Vintage 2009

もう我が家でも何本か開けた「P2 2000(Dom Perignon Plenitude2 vintage 2000)」も紹介しておこう。今の値段はいわずもがなかなり上がっている。ボトルネックには「プレニチュード」の頭文字「P」が付いている。かつては「エノテーク」だったが、2回目のピーク「P2」と名称変更した。
ちなみに熟成庫はそのまま、オーヴィール修道院地下セラーにちなんだ「エノテーク」の名が使われている。「P2 2000」はグラスに注ぐと微細な泡が間断なく立ち上る・・かなり薄めのゴールド。いわゆるドンペリ香はまろやかで穏やかだが、確かに感じられる。そこから八朔・黄桃・オレンジ・スモーク・・・舌の上からはスパイシーな旨味がじんわりと湧き出てくる。まろやかで丸みを感じる味わいだった。

P2 2000 Dom Perignon Plenitude2 vintage 2000

そういえば去年は「ラ・フェット ひらまつ」で「P2 2000」、博多「リストランテKubotsu」で「P2 2003」を開けている。ついでに今やかなり貴重となった「エノテーク」にも触れて行こう。最も印象的だったのは、以前某レストランで開けた「ドン・ペリニヨン エノテーク 1985(Dom Perignon Enotheque Vintage 1985)」。
開店以来10年以上店内セラーで寝かせていたという秘蔵の1本を開けさせてもらった。熟成して落ち着いた甘く妖艶な香りが何とも優雅だ。ドンペリ香はミネラルと共にすっかり溶け込んでグッと深い。甘露飴のようなニュアンスにオイリーな口当たりが長い余韻へと繋がって、数段階ステージの上がった完成度に引き込まれて行った。

P2 2000 Dom Perignon Plenitude2 vintage 2000

思い出せば、家で開けたエノテーク「 1996年」はシルバーボックスに三つ折りの説明書も入っていた。それによると1996年は気候の変化に富んだ年で、夏は水不足を十分に補うことはできなかったが、収穫日ひと月前から厳しい暑さと北東風によって葡萄に独特の熟成感をもたらしたとの事。
「バカラ(Baccarat)ドン・ペリニヨン専用シャンパンフルート」に注ぐと黄金の泡はすっかりと溶け込み大人しい。独特の香ばしいスモーキーなドンペリ香も和らぎ優しさを感じる。ブリオッシュに続いてオレンジ、白桃と黄桃が等分に混じったニュアンス。当然ながら通常の「ドン・ペリニヨン」より厚みを感じた。熟成を経て柔らかさを感じるミネラル感が飲み口を引き締める。

P2 2003 Dom Perignon Plenitude2 vintage 2003

確かにエレガントな酸味が長い余韻を形成する。「ドン・ペリニヨン」の超熟成性を改めて感じた1本だった。最近で最も良かったのは「ドン・ペリニヨン 1990」だろう。若いドンペリニヨンの還元的要素はすっかり消えて上品なナッツの酸化的なニュアンスが何とも心地良かった。
湿気た木片のニュアンス・シロップ漬けのマスカット・熟した白桃・・グッと蕩けるような余韻はエレガントで長い。時間と共に白トリュフのニュアンスも立ち上がる。「1990年」にはロバート・パーカー(Robert M. Parker)も98点を付けている。それが良かったので同じ会社から購入したのが、偉大なヴィンテージと言われる「1985年」。

ドン・ペリニヨン Dom Perignon Vintage 1996

グラスに注ぐと褐色を帯びた深いゴールド。微細な泡がゆっくりと立ち上るがやがて消えて行く。ナッツ・カラメリゼ・ヌガー・パンデピス・蜂蜜・・アタックは滑らかで魅惑的。「泡の飛んだシャンパーニュ」と言うよりも「泡を微かに感じるソーテルヌ」と言った雰囲気だった。「1990年」が食中に楽しめるとするなら「1985年」は食後酒的に優雅に楽しみたい。
ついでに記憶(記録)を辿ると「1978年」も開けていた。ナッティなキャラメル・モカ・コーヒー・白トリュフ・・アタックはふんわりと軽やかであるが、口中で何ともまろやかな旨味がゆっくりと湖上の波のように広がる。控えめながら優雅な余韻は長い。泡が飛びきってしまったシャンパン古酒は好きではないが、これはまだ口の中に微かながら確かな泡が感じられて好ましい。

ドン・ペリニヨン Dom Perignon Vintage

「1985年より美味しいね」と妻は言っていた。ヴィンテージ的には優良な「1976年」と「1979年」に挟まれた弱い年であるが、保存状態もかなり良く満足度が高い。古酒になってくるとヴィンテージも大事だが、やはりボトル事の保存状態の影響が大きいなと改めて感じる1本であった。
そしてやっぱり記念日に開けたのは「ドン・ペリニヨン レゼルヴ・ドゥ・ラベイ 1988(Dom Pérignon Réserve de l’Abbaye)」。金属の盾型ラベルが施されている重厚豪華な木箱に入っており、裏のラベルにはナンバリングしてある。いわゆるドンペリゴールド、「P2」より長く20年以上の熟成を経てリリースされる。これも現在は「P3(3回目のプレニチュード)」に変更になった。

Dom Perignon vintage 2012 ドン・ペリニヨン

清廉なミネラルはどこまでも上品に溶け込み別格の味わい。時間と共にいわゆる特徴的なドンペリ香が顔を見せ、余韻はとてつもなく長い。上品な旨みの後にソーテルヌのようなニュアンス、その奥にオレンジの苦味が一瞬よぎる「旨み」「甘さ」「苦味」が球体の様にピュアでいて、複雑な味わいを構成している。熟成感とフレッシュ感が精緻な配置をみせる、見事な「1988年」であった。
ドン・ペリニヨンは「各ヴィンテージ」「各ヴィンテージを市場ないし手元で熟成させた味わい」「メゾンで熟成させたP2・P3の味わい」「更にP2・P3を市場ないし手元で熟成させた味わい」と楽しめるステージが複数存在する。発売される度にまとめ買いして、我が家のセラー室で熟成させるようにしてきた。

ドン・ペリニヨン Dom Perignon Vintage 2013

しかしながらこの円安だ!とにかく品薄・高価格が凄まじく、さすがに手に入りにくくなった。暫くは様子を見るしかないだろう。「ドン・ペリニヨン ロゼ」についてはまたの機会に。