ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

この日向かったのは「福岡大名ガーデンシティ・タワー」、明治通り沿いにひと際高くそびえるガラスタワーは「ザ・リッツ・カールトン福岡(The Ritz-Carlton Fukuoka)」。6月で開業2周年を迎えるにあたり、記念イベント「シックスハンズディナー」が行われるからだ。
正面玄関入り明るいエントランス廊下を抜けると、広がる空間に赤い台座に豪華なフラワーアレンジメントが鎮座する。背後には「宗像大社」をモチーフにした水墨画ストリングアート。早速、18階ロビーフロアへと向かう。

ザ・リッツ・カールトン福岡 The Ritz-Carlton Fukuoka

大きな窓から見えるのは夕日が美しく照らす博多湾。横に伸びるダイニングのインテリアデザインは、オーストラリア拠点のLayan Architects + Designers。博多織や久留米絣のアートワークや、有田焼などの器・絵画が飾られている。
右奥にあるイベント会場のオールデイダイ ニング「ヴィリディス(Viridis)」へ歩を進める。17~19世紀の北欧邸宅がモチーフの内装は、木々の温かみに包まれた穏やかな空間。伝統工芸「籃胎漆器」から着想を得た壁紙、小石原焼皿のオブジェが印象的だ。金色に輝く博多の街並みに夕日が沈んで行く様子も情緒深い。

ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

入口では早坂心吾総料理長が笑顔で出迎えてくれる。今回のディナーは、シンガポール「Beni」で8年連続ミシュランの1つ星を獲得した「Viridis」山中賢二料理長と、福岡でミシュラン1つ星を獲得した森英昭料理長、そして京都と東京で研鑽を積んだ日本料理「幻珠」中島弘貴料理長が競演するのだ。しかもシャンパーニュ「ドゥラモット & サロン」とのワインペアリングを供すると言う案内を頂き、我が家もすぐに予約した。
テーブルに着くとすぐに主役の3シェフ(シックスハンズ)が挨拶に来られた。山中シェフと中島料理長は先日もお会いしたばかりだが、森シェフは以前彼が開業していた警固のフレンチレストラン以来だ。

ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

さてシャンパーニュ「ドゥラモット(Delamotte)」について。1760年シャルドネの聖地メニル・シュール・オジェに創業した「メゾン・ドゥラモット」。一般に、最上級「サロン(SALON)」の姉妹メゾンと位置付けられてるが、ドゥラモット自体独自の発展を遂げている。創業以来「最高のシャンパーニュとは、まず、最高のワインであること」をメゾンの標語とする。
そんな「ドゥラモット」は、ミネラル感とバランスの良い上品な飲み口がモダンフレンチはもとより、和食にも合う。まず乾杯として注がれたのは「ドゥラモット ブリュット(NV Delamotte Brut)」。薄いグリーンかかったイエロー。グラスの縁にいかにもフレッシュな泡が立ち上る。

シャンパーニュ ドゥラモット Delamotte

コート・デ・ブランのシャルドネが50%、ブズィとアンボネのピノ・ノワールが30%、ヴァレ・ド・ラ・マルヌのピノ・ムニエ20%。ドサージュ9g/L。日中35度を超えたこの日、19時でもダイニングはまだまだ日の光に溢れている。金色に輝く夕日を感じながら頂く「ドゥラモット」の爽やかな清涼感が、まさに初夏のディナーの始まりにぴったりだ。余韻に程よい果実感がミネラリーに優しく広がる。保存がいいな。余韻の微かな苦みもアクセント。
アミューズは、森シェフによる「有明産マジャクのフリット アイオリ ピマンデスペレット」。アジャクとは正式名称アナジャコで、有明海の干潟などで漁が行われている。そのマジャクのフリットは熱々で供せられる。ねっとりしたマジャクの特徴的な身質を、バスク地方の香辛料、ピマンデスペレットのパウダーを振ったアイオリソースで頂く。

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続いてのシャンパンは「ドゥラモット ブラン・ド・ブラン( NV Delamotte Brut Blanc de Blancs)」。1988年、「サロン」と供に「ローラン・ペリエ」の傘下に入った「ドゥラモット」。葡萄の良年にしか「サロン」は造られず(10年以上熟成してリリース)、その他の年はその葡萄で「ドゥラモット ブラン・ド・ブラン」を作る。
ブリュットよりも明らかに芳香量豊かだ。白い蜜、レモンピール。余韻はやや暖かさを感じるボリューム感。フレッシュながら落ちついた酸味が爽やか、この季節にちょうど良い。白い花の蜜・甘くも爽やかな洋梨・・キレのあるエレガントな酸がミネラルと調和しつつ余韻を引き締める。そこに合わせて運ばれてくるのは中島料理長の和食だ。

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「雲丹殻盛り 渡り蟹 アボガド 出汁ゼリー」は、北海道産の殻付き雲丹に出汁ゼリーを効かせて、シャンパーニュとの接点がある。「唐津産トマト 酢漬け じゅんさい ふり柚子」は初夏らしいさっぱりさも心地よい味。「鱧落とし 青芋茎 梅肉 雷干し」も嬉しい一品。そして「縞鯵酢〆炙り アスパラ菜辛し合え」は、縞鯵の酢が良く、その印象をさらに炙りで広げている。アスパラ菜も良い塩梅。遅れてガラススプーンに乗せられた「真蛸湯引き 海ぶどう ゆきやざ素麺 和風カッペリーニ 芽紫蘇」が運ばれ、写真には間に合わず(笑) どれも素材を活かしつつ、中島料理長らしい細かく美味しい工夫にあふれて美味だった。
そして森シェフからのプレートは「軽く薫香をまとった宮崎県産シベリアチョウザメ 宮崎県産オシェトラキャビア 1983麦粉 新メークイン」。最近は宮崎のキャビアを提供するレストランは増えてきた。燻香をかけて違和感なく食せる。

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続いてシャンパン「ドゥラモット ロゼ(NV Delamotte Brut Rose)」が注がれる。シャルドネ使いの「ドゥラモット」ではユニークな存在のロゼ。アンボネイなどモンターニュ・ド・ランス南部のピノ・ノワール80%、メニルのシャルドネ20%。我が家も好きなセニエ法で醸造される。鮮やかなサーモンピンクの中に細やかな泡が立ち上り、さっと溶け込んでいく。
日が暮れて暗くなってきたテーブルに映える。赤いチャーミングな果実・細かくひいたスパイス・ラベンダー・・。芳香な美しい赤の果実味がバランス良く、綺麗な飲み応えとともに、余韻にはスパイシーな風味と甘さが広がる。

ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

これに合わせる料理は2品。まず山中シェフから「オマール海老のロースト 福岡県産白桃 能古島はちみつ ラベンダー」だ。ロブスターは素揚げして、白桃は蜂蜜でキャラメリゼした。オマールのジュとプレートの端にはラベンダーのソースも流された。やや甘めに仕上げた甲殻類の旨みが広がる
次に中島料理長の「揚げ物 丸春巻きずんだ餡トリュフ掛け」。枝豆のピューレにもスッポンのエキスを入れてとろりと深みを感じる餡になっている。熱々のスッポンの深い旨みが、春巻きの香ばしい香りと食感ともに混じりあう。ずんだとトリュフの香りもアクセントに、ロゼと良い調和をみせてくる。中島料理長らしい安定の美味しさだ。

ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

注がれたのは「ドゥラモット ブリュット ブラン・ド・ブラン(Delamotte Brut Blanc de Blancs)2018年」。ヴィンテージのブラン・ド・ブランは、メゾンの拠点のル・メニル・シュール・オジェのほか、アヴィーズ、クラマン、オジェなど6つのグラン・クリュのシャルドネをブレンドして作り上げる。
繊細で持続性のある泡。香りはナッツ、洋梨と柑橘類の皮のアロマも広がる。アーモンド、スパイスの香りがやはりノンヴィンテージよりも力強いが、一方で全体的な優しさで丸く包まれている。この「ブラン・ド・ブラン 2018」に合わせるのは中島料理長と山中シェフ合作の「あわびのソテー 肝ソース 大根リッチな赤ワインソース」。

ザ・リッツ・カールトン福岡 The Ritz-Carlton Fukuoka 幻珠会席 中島料理長と橋本マネージャー

とてもしっとりとした艶かしいテクスチャーに仕上げた玄海産鮑は、贅沢にもかなりのボリュームだ。流された肝ソースと赤ワインの2種類のソースが最後まで飽きさせない。そして軽い仕上げの大根もなんとも言えない口直しで良い。ソースが鮑の海の旨みを見事に引き出してくる料理であった。そこに来られた「幻珠」中島料理長と橋本マネージャーと共にいつものように楽しくお話しさせて頂く。
そこに今宵お待ちかねの「サロン ブラン・ド・ブラン ル・メニル ブリュット(Salon Blanc de Blancs Le Mesnil Brut) 2013年」が登場する。「2013年」は「2012年」に続くグッドヴィンテージと言われている。「サロン 2013」はちょうど2023年秋から市場に出てきた。その意味でも「ザ・リッツ・カールトン福岡開業2周年」にふさわしいシャンパーニュだろう。

ザ・リッツ・カールトン福岡 開業2周年記念ディナーイベント The Ritz-Carlton Fukuoka

1914年、ウジェーヌ・エメ・サロン(Eugene-Aime-Salon)氏によりル・メニル・シュル・オジェ村に設立されたシャンパーニュメゾン。毛皮商だった彼が趣味で始めたシャンパーニュが評判を得て発展した。コート・デ・ブランのグラン・クリュ畑で、良年にのみシャルドネ一番絞りだけを使用して造られるのが、このブラン・ド・ブラン「サロン」だ。マロラクティック発酵は敢えて行わず、キレの良い酸味が骨格をなす。デゴルジュマンの際のドサージュは5gと少なくシャルドネ本来の果実味をいかす。そのこだわりからくるエレガントさが特徴。熟成と共に数段もギアの上がった姿を見せてくるシャンパーニュだ。
初ヴィンテージ「1911年」からこの2013年までわずか44ヴィンテージのみのリリース。我が家でもお馴染みで、「サロン 2008」アソートセットを購入して楽しんだ(もう少しゆっくり飲めば良かったと今更後悔)。

サロン ブラン・ド・ブラン ル・メニル ブリュット(Salon Blanc de Blancs Le Mesnil Brut) 2013

どこまでもサロンらしく気品がある。滑らかながら存在感のあるミネラルともに上品な酸味が丸く広がる。ゴールドの中に立ち上がる微細な泡は、いつもながら宝石の様に美しい。優しい白い花の蜜・マーマレード、柑橘系皮のコンフィチュール・・・。控えめながら存在感のある香ばしく気品ある香り。ミネラルがまだ全体を覆っていて開いてないが、そのミネラル感が硬さではなく、柔らかく全体をまとめているのは流石な飲み口。どこまでも滑らかな口あたりはまさにエレガントで、流れ出る甘さと旨味が良い塩梅に余韻に広がる。
ステンレスタンクで醸造されているが、一部オーク樽も使っているのかと思わせるような熟成の始まりの雰囲気も微かに感じられる。最低でも10年の瓶熟成を経るという作り方からくるものだろう。

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いよいよメイン料理には山中シェフから「シグネチャーパイ包み 極味鴨あそび豚 フォワグラソースルアネーズ」が登場する。美しく仕上がったパイ包みからは香ばしい香りが流れ出る。以前パリで食べた某3ツ星のそれを髣髴とさせる。パイ包みらしい風味豊かな味わいは抜群で、ディナーのメインとして全体の流れをグッと締めてくれた。
そして最後は中島料理長と山中シェフ合作の「鹿児島県産鰻 玉蜀のバターライス木ノ芽」。関西風に皮目をパリッと仕上げた鰻を乗せて、甘い香りのコーンライスと共に頂く。

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デザートは夏らしい2種類。まずは山中シェフから見た目も可愛い「石垣島パイナップル ココナッツシャルトリューズ」。パイナップルとパッションフルーツのソルベが心地よい。香草の香りが山中シェフらしいアクセントだ。甘味と酸味のバランスがとても良く、さっぱりと食後を彩る。そして森シェフから彼らしいきゅう肥を使った滑らかな「宮崎県産マンゴー クレームダンジュ求肥」。
締めの小菓子は、森シェフと山中シェフ合作の「アマレット香る黒棒 丸ぼうろン カヌレ」。九州北部に懐かしい伝統菓子、黒砂糖から作られる「黒棒」とカステラに似た「丸ぼうろ」をアレンジしたものだ。紅茶とともに一息つく。

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顔馴染みのスタッフ達と談笑したり、向上心に溢れた若手スタッフのサービスを受けたりしていると、気づくとあっという間に3時間が経過している。開業2周年という特別な夜にふさわしい美酒と共に味わう素晴らしい料理達を堪能する一夜になった。7月前半に福岡市博多区に行くと街全体がお祭り風情になる。760余年の伝統を誇る「博多祇園山笠」は博多の総鎮守・櫛田神社の神事。計14の飾り山が各所に公開されるので、絢爛豪華な飾り山を見物がてらあちこち散策するのがいいだろう。