今日は「ルイ・ヴィトン 2026-27年秋冬コレクション(LOUIS VUITTON FALL-WINTER 2026)」について、メンズとウィメンズそれぞれについて話してみようと思う。
まずは1月パリ・メンズファッションウィーク初日、「フォンダンシオン ルイ・ヴィトン(Foundation Louis Vuitton)」にて行われたファレル・ウィリアムスによる「ルイ・ヴィトン 2026年秋冬 メンズ・ファッションショー(Louis Vuitton Men’s Fall-Winter 2026 Collection by Pharrell Williams)」だ。草木が茂る庭の中心に浮かび上がるガラス張りの居住空間「DROPHAUS」。その中にモデル3人が歩み入り身支度を整える。日常を感じさせる静かなオープニングが印象的だ。そしてレコードプレーヤーが回り出す・・
ショー全体を通じてこの「邸宅」の周りを中心にランウェイが配置され、見る者は自然と引き込まれていく。時代を超えたラグジュアリー、「TIMELESS」がテーマの今シーズンを象徴する設営だ。ショーを視覚的に印象付けるこの建物は、1950年代アメリカ西海岸の実験的住宅建築プログラム「ケース・スタディ・ハウス(arts & architecture)」を模したもの。イームズやピエール・コーニッグなどがすぐ思い浮かぶだろう。
今回は、なんと日本の「Not A Hotel」がファレルと共同でデザインしたものという事で驚いた。「Not A Hotel」とは元放送作家小山薫堂氏がプロデュースしたユニークな業態のホテル。区分所有者が住居利用しないときにはホテルとして貸し出すというコンセプトで全國展開を図っている。

ファレル曰く「ラグジュアリーの本質を分析した」という今回のコレクションの一つの主役はスーツだ。冒頭からスリムでエレガントなダブルスーツが複数登場して私的にはかなり嬉しい(笑)「FUTUREDANDY」と銘打たれたシルエットは、80年代の印象を与え、どこかゆったりとしたボリューム感でありながら、実用性を兼ね備えたエレガンスが際立つ。生地は千鳥格子・ヘリンボーン・チェックというクラシカルさの中に、実は光を反射する糸で織り上げられたものもあったりする。
そのほかにも防水・撥水性を備えたジャケット、アルミニウムを結合させたしわ加工の素材、レザーのような質感のシルクナイロン生地など匠の技が散りばめられている。実用性・機能性をふまえた服にはあえてロゴやモノグラムの配置を少なくした。

一方でアクセサリーにはロゴや遊び心が満載。キャップが大々的に展開されたり、新作スニーカー(LVDrop)なども遊び心をくすぐる。雨粒の想起させる刺繍やクリスタル装飾など極小サイズの雫には「小さな変化が未来を変える」というファレルの思いが込められている。先に紹介した建物が「DROPHAUS」と名付けられてるのもこのコンセプトからだろう。
そしてファレルのショーで忘れてならないのは音楽。オーケストラとゴスペルの生演奏も定番だ。今回もファレルがプロデュースした、ジョン・レジェンド(JohnLegend)、エイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)、クエヴォ(Quavo)といった著名アーティストらの新曲を発表、これが毎回楽しみなのだ。
そうそう先日の「第68回グラミー賞」では、ファレルがプロデュースしたクリプスの「Chains & Whips」が最優秀ラップ・パフォーマンスを受賞。授賞式では、クリプス(Clipse)とファレルがお馴染みの合唱隊を率いて「So Far Ahead」を披露した。そしてファレル個人では「Dr. Dre グローバル・インパクト賞」を受賞した。

ちなみに、ファレルとクリプスがレッドカーペットで着用したピンクベルベットのスーツ、そしてパフォーマンスを行った際に着用したホワイトのジャケットはもちろんルイ・ヴィトンのカスタムメイドウェア。
おっと話を戻して、ファッション・ショーの最後には、豪華な「ミシン目入りの白いクロコのブルゾン」を纏ったファレルがいつもよりクールに登場。盛大な拍手に包まれフィナーレを迎える。時代の先端を走りながらも時代に左右されない未来永劫続く「ラグジュアリー」。計算尽くされたショーはいつも以上に唸らされた。どんな商品が具体的に市場に出てくるか、今から本当に楽しみだ。
一方の、ニコラ・ジェスキエールによる「ルイ・ヴィトン 2026年秋冬 ウィメンズ・ファッションショー(Louis Vuitton Women’s Fall-Winter 2026 Collection by NicolasGhesquiere)」は、先週パリファッションウイーク最終日にお馴染み「ルーヴル美術館(Musee du Louvre)」クール・カレで行われた。
ランウェイの周りには、ゲームを髣髴とさせるデジタル風な緑が山々のような段差のある造形で敷き詰められている。ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス(Stranger Things)」好きのニコラだから、ゲームやファンタジーの世界観かな?と直感したがある意味当りか(笑)
この抽象自然な舞台は苔に覆われた「ネオ・ランドスケープ」。サイコスリラードラマ「セヴェランス(Severance)」のプロダクションデザイナー、ジェレミー・ヒンドル(JeremyHindle)が担当した。彼はアカデミー受賞作「ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)」、「トップガンマーヴェリック(Top Gun: Maverick)」、突発的な弾道ミサイルの発射による世界の終末を描く「ハウス・オブ・ダイナマイト(A House of Dynamite)」なども手掛けており、私も見た作品ばかりだ。

ファッションショー前に流された映像の、「シュールな子羊」のアートワークは、ウクライナ出身アーティスト、ナザール・ストレリャエフ=ナザルコ(Nazar Strelyaev-Nazarley)が描いたもの。これは後にルックにも出てきた。そして岩の割れ目から黄色い光が漏れ出しファーストルックが登場する。いきなり「なに??」と問いかける・・意表を突く両肩のピンと大きく張ったデザインが続く。
これはトルコの羊飼いが伝統的に身に着ける衣装「ケペネク」をモチーフにしたと言う。今回のニコラのテーマは「スーパーネイチャー(SUPER NATURE)」。自然こそが最高のファッションデザイナーであるというニコラの思想をテーマの中核にそえた。

風・雨・太陽といった厳しい自然の中ではぐくまれた世界各地の衣服を通じて世界の文化を旅し、そして現代的な視点で再解釈したものだという。まさに旅がテーマのLVらしさ。フォークロアもテーマであり、世界各国の民族衣装をモチーフにしたと思われるルックが続く。
服やアクセサリーにも、ペルー、ネパール、モンゴルの大草原を感じさせる要素が盛り込まれている。アニマルパターンはデニムなどに織り込まれた。鉱物は3Dプリントでボタンへ、レザー造花や布のコラージュ・・鹿の角はハイヒールへと形を変えた。トランク・ビスをあしらったイヤリングやネックレス、1932年に誕生した「ノエ」の原点回帰をもくろみ、様々なフォルムの新作バッグ達も目を引いた。

自然の厳しさから人間の体を保護するという服本来の役割から世界の様々な文化に思いを馳せた、フューチャリスティックかつファンタジーなラインナップ。これが具体的にどんな商品で日本に登場してくるのか、ファレルとはまた違う意味で期待させてくれる。
ちなみに、逆転してしまったが、次回は現在発売中の「ルイ・ヴィトン 2026年春夏 ウィメンズ・コレクション(Louis Vuitton Women’s SS 2026)」トランクショー&顧客受注会の話をしよう。ルイ13世王妃アンヌ・ドートリッシュが暮らしたアパルトマンを舞台に「家」に思いを馳せたコレクションだ。

ファレルとニコラの世界観を通じて消費者に訴求してくるのは、時代や地域が変わっても変わらない「本質」というものだ。服はそもそも何のために存在するのか、ラグジュアリーとは何なのか、そしてなぜ我々をここまで魅了するのか。そういうことを考えさせてくれる思索的な「ルイ・ヴィトン 2026-27年秋冬コレクション」であった。続く・・

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