やってきたのは福岡県那珂川市の山沿い。代官山・銀座・博多の「リストランテASO」や「ザ・ひらまつ ホテルズ & リゾーツ 仙石原」の料理長を歴任し、ひらまつイタリア料理部門を統括していた吉越謙二郎シェフがニューオープンしたレストランだ。貸し切りでゆっくり楽しませて頂いたので回数を分けて連載中だ(店舗/シャンパン/前菜)。
赤ワインもボトルで選んでいこう。真新しいワインリストは、今のご時世では絶対に手に入らないイタリアの古酒が並んでいる。眺めるだけで素晴らしい。数本ずつしかないのでイタリアンワイン好きは急ぐべき(笑)

助っ人ベテランソムリエは「ザ・ひらまつ ホテルズ & リゾーツ 仙石原」山﨑稔総支配人。古酒らしい状態のコルクを地道に綺麗に開ける技術はさすがである。
そんなリストからチョイスしたのは「ビオンディ・サンティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 1985(Biondi Santi Brunello di Montalcino)」。ブルネッロのワインを世界的な水準と名声に高めたビオンディ・サンティ。所有畑の中で最も古いイル・グレッポの葡萄だ。若い時はエレガントながら濃厚な味わいであるが、この古酒はどうだろう。

ボトルから伺える色合いは薄くやや下り気味かなとも予想したが、良い意味で外れる。リーデルのクラスに注がれた味わいは、リンと澄み切っている。
薄い黒胡椒、黒オリーブ、ほのかな腐葉土。時間と共にまったりとした質感を纏った香りが隠しようもなく滲み出てくる。まだ枯れ切っておらず中心部には果実の芯がしっかりと存在感を見せている。それが料理にも寄り添ってくれる。余韻はやや短く線は細いながら、二時間経っても骨格は崩れず最後まで美味しく頂けた。

そこへ運ばれてきたパンは地元で評判の「ミナパン(mina pann)」のフランスパン。金・土・日曜昼のみ営業だそうだ。パンは吉越シェフ自身で焼くことも考えたが、お子さんがたまたま見つけたミナパンの味に一目ぼれして使用することを決めたという。
石臼で挽くというだけあって繊細で滑らかな口当たり。外側は薄いのにカリカリに仕上がっている。添えられるのは「リストランテASO」の名物だった自家製ホイップバター。ちなみにそれらの器は唐津焼「三藤窯」三藤るい氏の作品だ。現代女性らしい感性がこの店の雰囲気に合う。続く

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