先月オープンしたJR高輪ゲートウェイ駅前の「高輪ゲートウェイシティ(TAKANAWA GATEWAY CITY)」。車両センター跡地(約10ha)に、JR東日本が約6000億円を投じた4つの街区にまたがる大規模再開発だ。全体のデザイン構想をアメリカ「ピカード・チルトン(Pickard Chilton)」と「隈研吾建築都市設計事務所」が担当した事でも話題になっている。昨年3月のツインタワー「ザ リンクピラー(THE LINKPILLAR)」に加え、今回北の3棟が出来た事から「日本列島」デザインが完成したそうだ。
先日私は訪れたのは10月にオープンしたばかりの「JWマリオット・ホテル東京(JW Marriott Hotel Tokyo)」。「ザ リンクピラー ワン サウス(THE LINKPILLAR1 SOUTH)」の23階~30階に位置する。タクシーの人もまだ把握していない様で、古い方の「東京マリオットホテル」に行こうとした。

マリオット・インターナショナルの最上位ブランド「JWマリオット」、奈良に続き国内2軒目となるこちら。内装デザインはニューヨークとトロントに拠点をもつ「ヤブ・プッシェルバーグ (Yabu Pushelberg)」だ。1階の車寄せからダークな色合いのエントランスに入ると、逆さ富士から着想を得たアート照明がドーンと浮かんでいる。そして床には枯山水をイメージした石と水の流れ・・禅の精神と自然美に着想を得たと言うからなるほど不思議な世界だ。
奥に進んでエレベーターは、床には月が浮かんでいるデザイン。ここから「レセプション」「ラウンジ」「客室」など紹介したいところだがそれは次回にし、今回は先にレストランの話をしよう。29階にあるモダン地中海料理「Sefino/セフィーノ」、フランスの田舎風をコンセプトにデザインされたレストランだ。

ちなみにホテル内には6つのレストランが設けられ、「食」にも力を入れている。日本料理「Kako/華香」は天井の高いモダンな空間で朝食も頂ける。「華香 / Kakō」の一角にある日本料理「咲 / Saki」は全8席のみ。シンガポールの江戸前鮨「Shoukouwa(小康和)」でミシュラン2つ星を獲得した西田和峰氏とシンガポールのフレンチ「サン・ピエール(St Pierre)」を2つ星に導いたエマニュエル・ストルーバント(Emmanuel Stroobant)氏が監修している。
今回伺った「セフィーノ / Sefino」は海(sea)とそよ風(cefiro)、そして洗練(fino)を組み合わせた店名らしく、モダン地中海料理(フレンチ/スペイン/イタリアン)がテーマだ。レストラン監修は、ミシュラン香港2021 で1つ星、「Asia’s 50 Best Restaurants」を受賞した「Andō(アンドー)」のアグスティン・バルビ(Agustin Balbi)シェフ。

アウグスティン シェフはアルゼンチン・ブエノスアイレスの出身。14歳から料理に興味を持ち近所のレストランで働いていたという。2009年に来日し「龍吟」「ミッシェル・トロワグロ」で5年研鑽を積んだ。2016年香港の割烹「HAKU」の立ち上げに加わり、2020年からは香港「Ando」のシェフとしてミシュラン1つ星を獲得(2021~2025年)している。
さて「セフィーノ / Sefino」へ入って行こう。「JWマリオット・ホテル東京 」29階、ダイニングへ向かう長い通路の両面はワインセラーになっており圧巻の景色。オープンしたばかりだが、まだまだワインは増やしていく予定だそうだ。通路を抜けるとウェルカムスペースで、壁には多種類のパスタがディスプレイされているバーカウンター。そして奥に夜景が美しいエキゾティックなダイニングが広がっている。

コンセプトは「フランスの田舎風(アール・ド・ヴィーヴル)」、全体が明るいブロンズカラーでまとめられ、アンティーク調家具や大理石のカウンターなど、ラグジュアリーながらも温かみある空間となっている。基本40席でゆとりある配置だ。ダイニングの一角には個性的なセミオープンキッチンもある。奥の仕切り向こうは、落ち着いた雰囲気のセミプライベートルームが見える。
案内されたのは奥の広いソファー席、テーブルには今夜のコースに登場する「旬の食材」が詰まったボックスが運ばれる。美しいプレゼンテーションで気分を高めてくれる。シャンパンで乾杯しながらスタッフと談笑する(全て外国人スタッフと言うのもこちらの特徴の1つ)。

「ザルト(Zalt)」シャンパングラスにて提供されるのは、可愛い絵柄と共に「JW MARRIOTTO Tokyo」と記されたオリジナルシャンパンだ。それは「マリー・コピネ(Marie Copine)」、歴史は古く3代目のマリー・ローラとアレクサンドル夫妻が運営するドメーヌだ。コート・ド・セザンヌ地区モンジェノスト村(Montgenost)のレコルタン・マニピュランになる。ドサージュ4g/Lのエクストラ・ブリュット。シャルドネ、ピノ・ノワール。
綺麗なミネラルに上品な酸味がある。余韻にかけて微かな果実香と優しい甘みも感じられる。乾杯にはよく合うシャープで程よいシャンパン。こういう知る人ぞ知るRMのワインをハウスワインに添えるのはマリオットならではの目利きと人脈だろう。

まず運ばれて来たのは「マセラード&スナック」3種類。個性的な器に乗ってアートの佇まいだ。「ビーツ、マスタード、アチェート」は北海道産ビーツの微かな食感に優しい風味が複雑に広がる。「鰤、リンゴ、キュウリ、ライム」は京都のブリのタルタルをライムの余韻共に。食感のアクセントも良い。
「和牛、ケッパー、パルメザン」は熊本産赤牛のタルタルが底に潜んでる。パルメザンの塩気となめらかなムースとピリッとした余韻と共に。出だしからかなり素材の輪郭のはっきりとした力強い味わいだ。そこにやって来たのは、青さのりを練り込んである「フォカッチャ」。ふっくらとしたグリーンがかったそれは、ほんのり海藻の香りがする。

フォカッチャに添えられるのは、希少なエキストラバージン・オリーブオイル「エル・ミル・デル・ポアイグ(El Mil del Poaig)」だ。スペイン・マエストラット地方の樹齢1000~3000年のファルガ種オリーブ木(437本)の実を搾ってできる。年間2000本のみで流通量も限られている。香りは木から摘みたてのようなフレッシュで独特な青さを感じる。加えて澄んだ味わいは甘ささえ覚える。
ここで大きなカビアリ社のキャヴィア缶が登場、目の前でたっぷり盛り付けるプレゼンテーションだ。「鮪 クリスタルキャビア、パプリカフォーム」は福岡産マグロのタルタルを、パプリカのスモーキーでクリーミーなソースで覆い、さらにパプリカパウダーを振った。スプーンを入れると艶々なルビー色のぶつ切り鮪がたっぷり入っている。コントラストも美しい。クリーミーな口当たりから深い旨みと程よい塩気でまとめ上げた。余韻の長い深い味わい・・これはワインにピッタリだろう。

という訳で合わせたワインも書いておこう。まずは白は「ジャン=ベルナール・メテ シレックス(Jean-Bernard Métais cuvée silex)2023」。12~14か月、400Lのオーク樽で熟成させたロワール地方のシュナンブラン。樹齢80年。ジャン=ベルナール・メテは彫刻家としても活躍する。そういえばラベルにもギリシアの彫刻のような人物が描かれている。
日本人の妻と子ら家族で丁寧に作られたワインは、フランス「プラザアテネ」や「アルページュ」など限られたレストランにのみオンリストされている。日本のレストランではセフィーノに初めて卸されたということだ。淡い黄金色がグラスの中で輝く。ミネラリーなオレンジレモン・白桃・・・アタックから柔らかくも存在感あるミネラルが全体を覆っている。上品繊細なシュナンブラン。

そして赤ワインは「ジョセフ・フェルプス カベルネ ソーヴィニヨン(Joseph Phelps Cabernet Sauvignon )2022」。建築業で財をなしたジョセフ・フェルプスが1970年代、カリフォルニア、ナパヴァレー(Napa Valley)に起こしたワイナリー。ボルドースタイルのトップキュヴェ「インシグニア(Insignia)」は高い評価を受け続けている。この「カベルネ・ソーヴィニヨン」は新樽48%、古樽52%で18ヶ月熟成。
甘いジャムのニュアンス、甘草、時間と共にオリエンタルスパイス・レッドペッパー・ブラックベリー・・豊かな芳香量だ。溶け込んだタンニンの滑らかな心地よいニュアンス。果実のボリューム感を伴う余韻が程良い長さで広がる。

「地中海料理」を標榜するだけあり、魚料理は2品構成で提供される。まず「オマール・ブルー イエロートマト・コシード」は、ブルターニュ産オマールブルーをイタリア産イエロートマトを使いアラビアータ風に仕上げた。ほうれん草を添え最後にチリオイルも流した。かなりレアな火入れで艶めかしいタッチだ。ソースはピリッとした酸味と旨みの余韻が長い。オマールブルーにこういうソースを合わせてくるのもアグスティン・バルビシェフならではの感性だろう。
続いて「甘鯛、エシャロット、海藻」は、鉄板で皮目をパリッと香ばしく焼き上げつつ、ゆっくりと火を入れた山口産の甘鯛。周りにはスペイン産カヴァで煮詰めたブールブランソースを流した。シーフードのエスプーマも添え、地中海の海を表現した。甘鯛の下には舞茸のソテーを包み込んだアオサの生地も隠れていて、最後に食感と風味の変化も与えてくれる。

「赤牛、パースニップ」はしっとりと火を入れて断面も美しい熊本産赤牛。周りには白ニンジンのピューレを添え、焦がしたポワローのパウダーも振った。煮詰めた独特のパンチのあるソースはアルゼンチン伝統のチミチュリソースだ。アルゼンチンの肉料理には必ず出てくるソース。こちらのそれはアグスティン・バルビシェフの父のレシピをベースにした思い出の味ということだ。赤牛の肉質を噛み締めるとソースも絡み合い食べ応えがあった。
せっかくなので、合わせて赤ワインをもう一種類頂こう、「ベガ・シシリア ピンティア (Vega Sicilia PINTIA)2019 」だ。テンプラニーリョ100%、平均樹齢は35年。「ウニコ(Unico)」で有名なスペイン「ベガ・シシリア(Vega Sicilia)」がD.O.トロの畑から作り出すワインだ。赤系果実や酸味を感じさせる独特なアロマから干し葡萄、ドライフラワー・ブラックベリー・リコリス・・・アタックは優しく中盤から余韻にかけてスムーズに喉越しを流れていく。少しスパイシーな複雑な余韻が残る。細身で上品ながらしっかりとした飲み心地だ。

そしてここで運ばれてくるのが、シグネチャーメニュー「メロッソライス」だ。スペイン・バレンシアの米料理である「アロス・カルドソ(Arroz Caldoso)をレストラン料理に昇華させた。幼ない頃に祖母の家で食べた味わいが念頭にある家庭料理だ。土鍋からテーブル横でプレートに取り分けられる。日本でいうおじやらしいが、少し芯がのこる米の仕上げ。
カルドソの語源はカルド、つまり出汁。赤座海老・鶏・イベリコ豚などを使った複雑なスープの味わいが面白いく、香り高く印象に残る。季節によって毛蟹・海鮮やキノコを使ったりと様々な食材を使ったスープだという。お替りもできるとの事だったが、既にお腹いっぱいだったので残念ながら辞退。

さてデセールは2種類。まず「苺、ベルガモット」。ホワイトストロベリーとそのソルベ。ジュレと混じり合うメレンゲの軽やかな溶けゆく食感と共にベルガモットの爽やかさが漂う。続いて、香港「Ando」のスペシャリテでもある「チョコレート、ルイボスティー」が登場する。ラム酒に浸したシフォンケーキ、ルイボスティーのアイスクリーム、温かいチョコレートのムースなどが重なる。異なる温度で提供される素材のコントラストが生きている。大人のデザートといったところだ。
そこでお勧めの食後酒を頂く事に。「ワレ ヴィンテージポート(Warre’s Late Bottled Vintage Port )2008」と「ピオ・チェーザレ バローロ キナート(Pio Cesare Barolo Chinato)」だ。最後の「小菓子とお茶」までとにかく盛沢山、演出も多国籍の味わいも満足であった。様々な国籍のスタッフ達と本店のエピソードなども伺い、ワインも飲み比べながら食事の余韻を楽しんだ。

ワインは約200種類700本を用意し、「モダン地中海料理」というレストランテーマに合わせてスペイン・フランス・イタリアを中心にセレクトしている。ボトルはもちろん様々なグラスワインも用意されてるのが嬉しい。
あえて地中海料理と謳っているのは、フランス・イタリア・スペインにフォーカスしながら、アルゼンチン出身シェフのバックボーンや自由な発想の料理を提供するからだろう。最初から力強い風味の余韻の長い料理が続くコースだ。誰かのコピーではなく、「アグスティン・バルビ」というシェフの精神を通して生み出されてくる料理達といえるだろう。

落ち着いた大人の空間の中、いつのまにか満席近くなった各テーブルも思い思いに楽しんでいる。という訳で次回は「JWマリオット・ホテル東京」のエグゼクティブブラウンジや客室などの紹介をして行こう。続く・・
「Sefino」
Modern Mediterranean Cuisine
2-21-2 Takanawa, Minato-ku, Tokyo, Japan
〒1080074
THE LINKPILLAR1 SOUTH, JW Marriott Tokyo

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